エアインパクトレンチは空気の力を利用して、人力では大変な労力がかかる締め付け作業を簡単にできるエアツールです。
自動車の整備工場のタイヤ交換や工場のライン作業の組み立て、建築現場のコンクリートの枠や金型の取り付けなど強い力でボルトやナットの締め付けが必要な現場で使用されます。
この記事ではエアインパクトレンチの特徴や構造、使用前の注意点、メリット・デメリットをご紹介します。
エアインパクトレンチの特徴
まずエアインパクトレンチは、電動タイプのインパクトレンチと比べて大きい力が発揮できるため、締め付ける力を高く要求される現場で使用される傾向があります。
締め付けトルクはモデルによって違うため、必要なトルクで締め付けられるエアインパクトレンチを選びましょう。
選ぶ基準は主にソケット差込角と締め付けトルクになるでしょう。
ソケット差込角
ソケットの差込角は9.5㎜、12.7㎜、19.0㎜、25.4㎜、38.0㎜と大きさが違います。
差込角が大きいほど締め付けトルクも大きいモデルになるため、作業で使用するボルトサイズに適合したソケットを取り付けられる差込角のエアインパクトレンチを選ぶようにしましょう。
適合したエアインパクトレンチを選ばないと、トルク不足やオーバートルクになり、作業が非効率になったり、事故になったりするため注意しましょう。
締め付けトルク
作業で必要な締め付けトルクがある程度の範囲で決まっている場合、エアインパクトレンチの最大トルクで選ぶのも良いかもしれません。
トルクを基準で選ぶとトルク不足やオーバートルクにならずに済みます。
エアインパクトレンチ形状
エアインパクトレンチは形状で選ぶこともあります。
電動ドリルのような形をしたピストル型、太いペンのようなストレート型、90度に曲がったアングル型など作業現場にピッタリな形をしたモデルを選ぶと作業の効率が上げられるでしょう。
それぞれの形状を解説します。
ピストル型
一般的に使用されるエアインパクトレンチはピストル型です。
車の整備工場や作業現場など広く普及している形で、トリガーのオンオフで締め付け作業を行います。
ストレート型
ストレート型は真っすぐな形状のエアインパクトレンチで本体を握りこむように持つ形状をしています。
主に工場のライン作業などで使用されることが多いとされています。
コーナー・アングル型
ピストル型やストレート型が使用できないような入り組んだ箇所や狭い場所で使用できるように特化した形状をしているエアインパクトレンチです。
ソケットの取り付け角がLの字型で90度に曲がっており、耕うん機の刃の交換などに重宝されます。
インパクトレンチのハンマー構造について
エアインパクトレンチは内部構造で1回転する間の打撃回数が違います。
今回は3種類、ツインハンマー、シングルハンマー、ピンクラッチのそれぞれの概略を説明します。
シングルハンマー
エアインパクトレンチが1回転する間に1回打撃を与えるのがシングルハンマーです。
本体を小型にでき、締め付けスピードが早く、手早く作業を進められるメリットがあります。
ただし、打撃力が必要な作業においてパワーが不足がちになります。
ツインハンマー
1回転する間に打撃が2回発生する機構が搭載されているインパクトレンチです。耐久性が高く、反動が少ないため、連続作業がしやすいメリットがあります。
ただし、打撃音があるため作業環境によっては騒音対策で耳栓を用意したほうがよいでしょう。
ピンクラッチ
打撃回数はシングルハンマーと同じく1回転1打撃ですが、低振動で滑らかに締め付けができます。
振動が少ないため連続作業に向いていますが、トルクが控えめなモデルが多い傾向があります。
エアインパクトレンチ使用時の注意点
どんな工具も共通ですが、使用前に本体の損傷やひび割れ、ガタつきなどを確認しましょう。その上でエアインパクトレンチの使用時の注意点を説明します。
専用ソケットを使用する
エアインパクトレンチはハンドツールのラチェットに取り付けるソケットも装着可能ですが、決して使用しないようにして下さい。
高負荷に耐えられるように作られていないソケットで作業すると、砕ける危険性があります。
見分け方はインパクトレンチ用のソケットは黒い色で普通のソケットより肉厚な構造をしています。
また、脱落防止用にソケットにピンを通す穴があり、Oリングで固定できるようになっています。
エア漏れ注意
エアホースを取り付けた時に空気漏れを必ず確認しましょう。もし空気の漏れる音や異音がある場合は使用を避けてください。
また動作異常があるようなら、使用を中止して修理に出すようにして下さい。無理に使うと事故の原因になります。
エアインパクトレンチのメリットとデメリット
ここからはエアインパクトレンチのメリットとデメリットをそれぞれ解説します。
メリット
わかりやすくするため、電動のインパクトレンチと比べてどのような点が優れているかをあげていきます。
パワー出る
パワーの原動力がモーターや消費電力ではなく、空気圧のため電動式に比べて高トルクを発生させることができます。
太いボルトやナットを締め付け作業に使用する場合は、電動式のインパクトレンチよりも適しているといえるでしょう。
工具本体が小型軽量
電動式のインパクトレンチに比べて、工具本体が軽量化できて作業者への負担が少なく済みます。
特に充電式バッテリーのインパクトレンチと比較すると、重さが1キロ以上エアインパクトレンチのほうが軽いこともあります。
デメリット
続いて、エアインパクトレンチのデメリットを説明します。
このデメリットにはエアツール共通のものが含まれていますが、およそエアインパクトレンチを使用する際には知っておいたほうがよいでしょう。
エアコンプレッサーが必要
エアツールはそれ単体では使用できません。そして使用できる空気圧が異なり、コンプレッサーの圧力に対応したものでないと使えません。
そのため、今コンプレッサーを持っている場合、空気圧を確認して対応しているエアツールを選びましょう。
エアホースの取り回しが面倒
エアツールの共通の問題ですが、コンプレッサーとエアインパクトレンチを繋ぐホースの取り回しは注意が必要です。
特に車の整備工場など現場でモノや人が頻繁に動くような場合は、ホースが人の足に絡まったり、機械に挟まれたり、移動の邪魔になったりして事故の原因にもなります。
締め過ぎに注意
エアインパクトレンチは一気に高トルクでボルトやナットの締め付け作業が可能です。
しかし、高すぎるトルクはナットやボルト、ねじ山の破損につながるため、数回に分けて締め付け作業を行いましょう。
もし、トルク制限が可能なエアインパクトレンチであれば、締め付けるトルクよりもやや低めに設定すると事故が避けられるでしょう。
騒音問題
作業現場によって事情は違いますが、エアインパクトレンチの駆動音は電動工具と比べると大きな音が出ます。そして、エアコンプレッサーも空気を圧縮する音を出します。
そのため、周りに騒音問題の配慮と耳栓などを準備しないといけない場合があります。
まとめ
空気圧を利用するエアインパクトレンチは高いトルクでボルトやナットの締め付け作業ができる工具です
内部の構造によって打撃数が異なり、コンプレッサーの圧力に対応したモデルを選ぶ必要があります。
使用前に専用ソケット、エア漏れのチェックを行い、エアインパクトレンチから発生する騒音が問題にならないように配慮して作業をしましょう。