*今回の悩み人*
『糸のこ盤っていう工具を知ってますか?手動で切らないといけなかった糸のこ作業が自動で行えるようになる便利なアイテムらしいのですが…使い方とか注意点を解説していただけると嬉しいです。』
今回の記事を読むとこんなことが分かります。
- 糸のこ盤とは?基本的な基礎知識あれこれ
- 糸のこ盤の具体的な使用法・注意点など
『糸のこ』とは、材料に曲線を描いてカットすることが出来る便利な工具です。
そんな糸のこを電動工具にすることで、今まで以上にカーブカットや切り抜き作業が効率化出来るので、プロの職人さんをはじめDIY初心者にも人気の工具であります。
今回は『糸のこ盤』についての基本的な情報や使い方、取り扱い上の注意点などを分かりやすく解説していきたいと思います。
そもそも糸のこって何ですか?
??『私これ知ってる!この間学校の授業で使ったんだよね、すごいでしょ?木材をまっすぐ切る電動工具はたくさんあるけどカーブを描いてカットできる機械はなかなか無いような気がするなぁ…』
通常のノコギリは直線を切り進めていけますが、弧を描くようなカーブカットは出来ません。
一方、糸のこは刃の部分が糸状になっており進行方向に応じて任意の曲線切りをすることが出来ます。
つまり、糸のこを電動化してより作業効率を上げたのが糸のこ盤であり、材料を刃に向かってゆっくりと押し当てるだけで簡単にカットすることが出来ます。
二つの最大の違いはどこでしょうか?
糸のこは工具側を動かして切り進める事に対して、糸のこ盤は材料側を動かして切り進めるので、最小限の労力で材料をカットする事が出来るわけです。
しかし、手動糸のこ自体も手軽にサッと使用できるので、あえて電動ではなく手動タイプを使用する方も居るほどの便利な工具です。
糸のこ盤の特徴を解説!
ここでは糸のこ盤の主な特徴をご紹介していきます。どんな工具なのかを理解する事で、難しい加工も簡単にこなせるようになります。
特徴① 曲線を描くカーブカットが得意
糸のこ盤は電動ノコギリ系の中でも曲線への切断が得意なので、比較的活躍する場面が多く人気の電動工具です。
糸のこ等を用いて手動で曲線を切ろうとすると、想像以上の時間と労力が必要であり、思った以上に苦労した経験をされたことがあるかと思います。
糸のこ盤は刃の部分が自動で動いてくれる為、自ら手を動かす必要は無く、材料側を動かして切り進めます。
材料を両手でしっかりと持ち、垂直に固定された糸刃に向かってスライドさせる事で自由な形にカットすることが出来ます。
特徴② 小型なので作業スペースを気にせず設置できる
据え置き型の電動工具は大きくて重いものが多く、設置スペースが十分確保できない為に導入を見送る方も多いと思います。
糸のこ盤に関しては、ごく一般的な大きさのテーブルがあれば簡単に設置することが可能であり、快適な作業環境を構築することが出来ます。
ただし重量に関しては10キロを越えるものが多く多少の振動も発生するので、天板や脚がしっかりとしたテーブルや作業台の上に置いて作業しましょう。
特徴③ 用途に応じた3種類の糸のこ盤がある
一口に糸のこ盤と言っても構造の違う3種類の糸のこ盤があります。
それぞれの細かい違いを下記にまとめました。
名称 | 主な用途と特徴 |
---|---|
バネ式 | バネの先に装着したノコギリ刃をモーターの力で下に引っ張り、バネの力で上方向に引き戻す構造。このタイプは本体が大きく重い物が多く、刃にかかる負荷やテンションが不安定な為刃が折れやすいとされている。 |
カム式 (パラレルアームシステム) | バネで固定するタイプとの違いは、ノコギリ刃をアームに装着してアームをモーターで動かすという点です。振動や騒音はバネ式に比べ少なく刃にかかる負担も減ったため突然歯が折れる事も減った。また、パラレルリンクシステム搭載のものより安価である。 |
カム式 (パラレルリンクシステム) | パラレルアームシステムを改良したもので、上下のアームを動かすのではなく後部に追加されたアームをモーターで動かす仕組み。さらにアームの先にカムが足されたため最も振動が少なく静音性に優れるが、本体価格が高価なのがネック。 カム:あらゆる角度に対応できる機械的構造体。 |
特徴④ 安全性が高く小学校でも使用されている
『おい、危ないだろ!小学生に電動工具なんて使わせるな!!』
親御さん方からこのような声が多く、授業で電動工具なんて使わせてもらえなかった、なんてことが一昔前は起きていました。
しかし今では知育の一環として、専門の講師を招く等しっかり管理体制を整えた上で、電動工具を使用した木工細工の授業が行われています。
このように小学生の場合はサポートが必須ではありますが、サポートがあっても扱えない電動工具が数多くあります。
糸のこ盤は『動作している刃』に手を触れない限りは誰でも比較的安全に使用でき、かつ技術性の高い加工ができるので人気があります。
具体的な使い方解説!
ここからは糸のこ盤の使い方を解説していきたいと思います。
糸のこ盤は、木材をはじめアルミ等の薄金属やプラスチックなども切断することが出来るので、作業に合ったそれぞれの刃を準備しておくと良いでしょう。
まずは要となるノコギリ刃を装着するのですが、必ず電源コードを抜き本体が動作しない状態で交換を始めましょう。
絶対にそんなことしないと思いますが、誰かが使用した後だったり前回の作業後に電源コードを挿しっぱなしだったりで思わぬ怪我をした事例があります。
その1 ブレード調整レバーを垂直にして刃を取り付ける
糸のこ刃は本体の下側から順に取り付けます。
基本的には木工用の刃は刃数(山数)が少なく、金属用は細かい刃がついており、その中間がプラスチック用という具合です。
※(メーカーによって誤差あり)
名称 | 山数 | 幅(mm) |
---|---|---|
木工用刃 | 19〜65 | 1.3〜1.38 |
プラスチック用刃 | 52〜150 | 1.38〜 |
薄金属加工用刃 | 98〜122 | 1.25〜1.3 |
・刃の交換の際、糸のこ盤にあらかじめ付属されているレンチだと長さが足りず、特にテーブル下の刃の交換に苦戦する場合があります。
機種にもよりますが。長めのレンチや同サイズの『ボールポイントドライバー』があるとストレス無く刃の交換が行えます。
その2 電源をON、適切な回転数で切り進める
本体の回転数を設定することでストロークの速さを調整することが出来ます。
主に曲線をカットするときは1000〜1300回転が理想的とされております。
・それ以上の高速ストローク(1600)だと木材が焼けてしまったり、糸のこ刃が勝手に進んでしまいカットラインが大きく膨らんでしまいます。
・逆に低すぎるストロークの場合は、糸のこ刃の切れ味が悪くなりやすくなったり、引っ掛かりや材料のバタつきが起きたり、切断面も荒くなってバリ取りの手間が増えたりします。
カム式の糸のこ盤は最大回転数が1600以上のタイプが存在します。
少しでもカット作業を速くこなしたいが故に、超高速回転で作業をした結果、摩擦熱で糸のこ刃が破断してしまいました。
また、切れ味の悪い刃の使用も控えるようにしましょう。
切れ味が悪いと材料を無理な力で刃に押し付けることになる
↓
切断がうまく出来ず進まないので仕方なく高回転ストロークにする
↓
木材が焼けてしまったりカットラインの膨らみに繋がる
このような悪循環に陥らない為にも、まずは高品質な糸のこ刃を使用しましょう。
その3 中抜き作業の場合はあらかじめ穴を開けておく
糸のこ盤が得意とする切断方法に中抜きというものがあります。
これは文字通り木材の内側を切り抜く方法で、カット部分に至るまでの切断ができないような作業に向いています。
これはジグソーなども得意な切り方ですが、糸のこ盤の方がより綺麗で正確に切り抜く事が出来ます。
使用上の注意点とは?
ここでは糸のこ盤を使用する上での注意点をご紹介します。
頭では分かっていても、いざ作業をすると忘れてしまうような事があるのでしっかりとチェックしましょう。
材料に適した形状の刃を使用する
刃の幅や刃数が材料に合っていないと仕上がりに大きな差が出たり、そもそもカットが出来ない事が起こり得るので、下記の表を参考にしてみてください。
刃数・厚さ | 仕上がり | 弱点 |
---|---|---|
刃数が多い | 切断面がキレイ | 切断に時間が掛かる |
刃幅が小さい | 曲線がスムーズ | 硬材や厚材が苦手 |
刃の厚みが大きい | 厚い板カットが得意 | 曲線はカットしづらい |
安全だからといって、絶対に油断しない
厚生労働省の職場安全サイトでは様々な電動工具での労働災害の事例を閲覧することが出来ます。
災害の数はヒヤリハットから死亡事故まで実に数千件の事例がありますが、糸のこ盤に限っては大きな災害事例がありません。(公表されていない事例もあるかと思いますが…)
??『糸のこ盤ってほんと安全ですごいんだね!これなら私も使えそうだしガンガン木材を切りまくるぞー!!』
安全性を過信した結果、上下する刃の可動部に衣服を挟まれて怪我をしたり、刃の延長線上に手を置いてしまい誤って刃に触れてしまった事例があるので十分に注意して使用しましょう。
まとめ
今回は糸のこ盤の基礎的な情報や特徴、基本的な使用方法に加え取扱いの注意点などをご紹介しました。
糸のこ盤は、材料に対して曲線を描いてカットする事ができるので細やかな装飾パーツを作成したり、薄金属材の加工、またDIY作業にも適しています。
他の電動工具に比べ取扱いが簡単なので、学生からご高齢の方まで幅広い世代の方が使用できますし、一台持っておくと作業の幅が広がります。
家族で一緒に木工細工を作ったり、オリジナルの家具を作成したり…
コロナ禍でおうち時間が増えたこの機会に導入して、自分だけのオリジナル作品を作ってみてはいかがでしょうか。