製品の温度を測りたい時に放射温度計はとても便利です。
ただ、放射温度計であっても得意分野と不得意分野があります。しかし、向いている使用法などは案外知られていないものです。
そこで今回は放射温度計のメリットとデメリットや放射温度計の種類、使用場所等について見ていきます。是非、最後までご覧ください。
放射温度計の原理
物体から送られた赤外線をレンズでサーモバイルと言う検出素子に集光します。
サーモバイルとは物体から送られる赤外線を吸収して、吸収したものによって暖められると、温度に応じた電気信号を生じる検出素子です。
この電気信号の振幅を増大させ出力し、放射率補正をして温度を表示するものです。
放射温度計のメリット
触れる事無く測定できる
当該物に触れる事無く測定できる事は食品現場ではかなりのメリットとなります。
食品に触れる事により食材に雑菌等が付着してしまうリスクがあるので、触れなくて良いのであればリスクの軽減に繋がります。
一瞬で測定可能
短時間で測定出来ると言う事は、例えばベルトコンベアで流れる物の温度測定などや食品原料の受け入れ時等時間が無い時の温度確認等に向いています。
また、瞬時の温度をその場で取る事も出来ます。
遠距離でも測定できる
理論上ではレーザーさえ届けば温度測定出来ます。
但し、放射温度計には視野があるので、遠くなると視野が広がるので対象物より視野が大きくなり対象物以外の温度を拾ってしまい正確さを欠く可能性があります。
高温でも測定可能
抵抗温度計の最高測定温度は900℃、熱電対が1700℃程度ですが、放射温度計は3000℃まで対応可能な機種があります。
動いている物体でも測定可能
非接触の温度計なので移動したり、回転したりする物体であっても測定する事が出来ます。
熱容量の小さい物体・熱伝導率の小さい物体・微小面積の物体も測定可能
線材やチップなど微小面積の物体や熱容量の小さい物体も測定できます。
危険な箇所の物体も測定可能
遠方からの測定が出来るので、近づく事が出来ない危険な箇所の温度測定が可能です。
放射温度計のデメリット
表面温度しか測定できない
放射温度計の原理上仕方の無い事です。対象物が放射している赤外線を感知して測定している以上、表面の温度測定になります。
工場などの現場ではタンクや容器に入っている対象物も多いでしょうが、外部が何かに覆われていると、その中身の温度の計測は不可能です。
測定が不得意な対象物がある
この問題には放射率が絡んできます。対象物により数値が違うので同じようには使用できません。
対象物が不透明であれば、おおよそ使用できますが、水や硝子等の光が透過する物、金属等の光沢があり反射する物は不得意です。
測定が不得意な物もありますが、問題なのは表面だけの問題なので、その表面に黒いテープや黒いスプレーを塗布する事で測る事が出来ます。
物体に合わせ放射率の設定が必要
完全黒体を1とした時にエネルギーの放射量を表したものが放射率です。
放射温度計を使用する際は対象物の放射率を設定しなければなりません。放射率が正しく設定出来ないと間違った値となります。
但し、その設定はかなり困難で完全な正しい設定はほぼ不可能です。
対象物と計測機器との間に水蒸気があると誤差が発生する
両者の間に大量の水蒸気があると、赤外線が水蒸気に吸収されてしまい、計測機器に到達する赤外線が減ってしまい、温度を低く読んでしまいます。
放射温度計の使用場所
放射温度計は短時間で表面温度を測る事が出来る温度計です。中心温度計とは違い内部の温度は測る事は出来ません。
主に使用する場所は、ベルトコンベア等で流れる食品や食材の荷受時の温度チェックやフライパンの温度確認、大型の鍋を使用し中心温度計が届かない食品の温度チェックにも使用できます。
また、危険で人が近づけないような環境で距離を置いた場所からの温度測定、通電中の配電盤の温度測定、天井の温度測定等で使われています。
放射温度計の種類
ハンディタイプ
検出部と変換部の区別はありません。両者が一体化された放射温度計です。小型で軽量なので、携帯し手に持って温度測定をする事が可能です。
機器等の点検やメンテンナンスに重宝します。
設置型
検出部と変換部が分かれています。両者を接続ケーブルで電気的に繋ぎ、固定して温度を測る放射温度計になります。
3,000℃を上限とした中・高温域用や高分子フィルム・ガラス測定が可能な機種もあります。
熱画像型
温度を可視化して温度分布を一目見て把握出来るタイプです。
まとめ
放射温度計のメリットとデメリットや放射温度計の種類、使用場所等について見て参りました。いかがでしたでしょうか？
放射温度計は短時間で測る事が出来るとても便利な製品です。しかし、正しい使用法で使わないと誤差が大きくなる温度計にもなってしまいます。
測定する事自体はボタン一つで出来ますが、知識が無いと正しい測定が出来ません。正しい使用法を理解してこそ測定は意味を持ちます。
正しい商品選定をして、正しい使用法でしっかり意味のある測定をしましょう。
