*今回の悩み人*
『木材のトリミングにはトリマを使用するのが効率的でオススメと言われたのですが、トリマとは一体どんな電動工具なのでしょうか。ペットの毛を綺麗にするヤツ?何か知っていたら情報を求むー!』
今回の記事を読むとこんなことが分かります。
- トリマとは?基本的な基礎知識あれこれ
- トリマの具体的な使用法・注意点など
トリマとは何か、電動工具に詳しくない人に尋ねると大体の方はペット用のバリカンだったり毛をむしり取る道具でしょ?という回答をいただきました。
他にも『とりあえず、まぁ』の略称として会話に使用されるなど、トリマにはさまざまな一面があるようです。
今回は電動工具トリマについての基礎知識と、具体的な使用方法や注意点などを詳しく解説していきます。
そもそもトリマって何ですか?
この項目では初心者に向けたトリマについての基本的な情報や、知っておきたい基礎知識を分かりやすく解説していきます。
基礎は知っているから使用法が知りたい方は『具体的な使い方解説!』の項目にスキップして下さい。
トリマは木材の切削が得意な電動工具
トリマは先端のビットと呼ばれる刃を回転させ、木材に色々な加工を施すことが得意です。
このビットを交換することによって『飾り面取り』や『溝の作成』など多数の加工方法に対応でき、建築現場や家具製作など様々な場所で使用されております。
名前の由来は英語のlaminate trimmerから来ており、縁取り、つまりトリミングする工具という意味を持っております。
??『もうー。さっきからトリマトリマってさ、伸ばし棒を入れ忘れてるよ?私みたいにちゃんとトリマーって記入しないと見た人が勘違いしちゃうじゃない。』
名称に関しては賛否両論ありますが、日本工業規格(JIS)による手持ち形電動工具ー安全性ーの項で正式にトリマと記載されております。
トリマーではなくトリマが正式名称という認識で良いかと思います。
(詳しくは 『JIS C9745-2-17 手持ち形電動工具』 などで検索してみて下さい)
トリマの特徴を解説!
ここではトリマの主な特徴をご紹介していきます。どんな工具なのかを理解する事で、難しい加工も簡単にこなせるようになります。
特徴① ビットを付け替えて様々な溝切り、面取りが可能
ビットは先端工具と呼ばれ、主に電動工具の先端に取り付けて高速回転させることで対象を削ったりビスを締めたりと、色々な事が出来るようになるアタッチメントのことを指します。
トリマにはこのビットが多数用意されていて、大きく5種類に分類されます。
そこから更に細かく分けられたビットは実に40種類以上にもなり、それぞれを使い分けることで効率的な作業が可能となります。
主なビットタイプと用途は以下の通りです。
ビットタイプ | 用途別ビット |
---|---|
面取り用ビット | ・ボーズ面用 ・ギンナン面用 ・新ギンナン面用 ・ヒョータン面用 ・サジ面用 ・両段サジ用 ・新両段サジ用 ・平貴丁面用 ・サルボー面 ・サルボーサジ面用 ・面取60°用 ・角面用 ・カサ付き面取用 ・ストレートトリマー ・両偏心トリマー |
切り抜き用ビット | ・超硬ストレートビット ・超硬ソリッドストレートビット ・強力1段フラッシュビット ・超硬1段フラッシュビット ・超硬2段フラッシュビット ・ガイドベアリング付ストレートビット ・目地払 ・Wベアリング付目地払 ・カサ付目地払 ・目地払デラックス ・楽々ニックビット ・ソコギリビット |
接合用ビット | ・超硬アリギリ ・アリ錐 ・シャクリ面用 ・トメ切り用 ・横溝ビット ・はぎ合わせオスビット |
溝切り用ビット | ・布木ビット ・V溝ビット ・U溝ビット |
座堀カッター | ・超硬ザグリカッター |
??『すごい、ビットにはこんなに種類があるんですね!これらを使い分けることで効率的な作業ができるわけですが、全部の使い方を覚えるのが大変そう…』
※全ての使い方を覚える必要はありませんので安心して下さい。基本的には『飾り面取り用』と『溝掘り用ビット』の扱い方を押さえておけば十分にトリマで作業することが可能です。
特徴② ちょっと違う?トリマとルーターの違い
トリマはルーターと呼ばれる電動工具と同じものとして扱われますが、厳密には少し違います。
簡単にまとめるとルーターを小型化したのがトリマ、トリマをよりハイパワーにしたのがルーターであります。
下記に具体的な違いをまとめてみました。
トリマ | ルーター |
---|---|
・片手で操作する | ・両手で操作する |
・繊細な作業が得意 | ・パワーを活かした切削が得意 |
・飾り面取りに重点を置く | ・溝切りに重点を置く |
・毎分3万回の高速回転 | ・トルクを重視し硬材にも対応 |
トリマとルーターが混同されがちな理由は、どちらも同じ作業をこなせる点にあります。
しかし、それぞれの特徴を理解することによりどちらが適切に作業をこなせるかが分かると思います。
トリマは高速回転を活かし繊細で複雑な加工を得意としている一方、ルーターは粘りあるトルクで柱や角材といった硬い材質の溝切りを得意としています。
トリマでも溝切りが出来ますが、切削量の多い作業ではルーターを使う…このように互いを使い分けて効率的に作業を進めていきましょう。
具体的な使い方解説!
ここからはトリマの使い方を解説していきたいと思います。ポイントを押さえて安全に作業効率化を目指しましょう。
その1 :ビットを交換する
- 用意するもの→ビット、スパナ×2
まずビットと呼ばれる先端工具を作業に適したものに交換します。
この時、必ず電源やコンセント、バッテリーを抜いてから交換作業を行いましょう。
(このベース部は取り外さなくてもビット交換は可能ですが、取り外した方が作業をしやすいです。)
(この際、シャフト固定用スパナは締め付ける方向の作業台面に接するように配置します。)
コレットナットを外すとコレットコーンとよばれる小さなパーツが出てきます。
ビットを本体に取り付けていない状態でコレットナットを締めてしまうとコレットコーンが破損するので注意して下さい。
その2 : 切削深さを調整
次にビットが材料をどこまで掘るか(出寸法)を調整します。
(スコヤを使わなくても、トリマ本体に記されたメモリを元に設定する方法もあります。)
??『スコヤは精度が求められる直角を確認したり、金属にケガキしたり木材に墨付けする時に使われる工具のことだよ!』
一回の作業では、切削の深さを3mm以下に設定しましょう。
それ以上の深さにするとビットや本体に負荷がかかり、切削面が荒れたり木材が摩擦で焦げてしまいます。
つまり、深い切削を行う場合は何度かに分けて少しずつ切削を進めていく事がオススメです。
上記の説明はどの加工法にも共通の基本的な準備工程なので覚えておきましょう。
面取り加工
ここからはトリマが得意とする『面取り加工』を元に作業方法を解説していきます。
このビットは時計回りに回転するので、左側に配置した場合はトリマの強烈な反発力が作用して制御不能状態に陥り事故につながります。
また材料が弾き飛ばされて怪我をするパターンもあるので必ず※1の基本姿勢を守って作業を進めましょう。
溝掘り加工
ここではトリマに付属しているストレートガイドを使用して溝掘りを行います。
(加工材に傷がつかないよう、加工材に接するガイド部にはシナベニア等を貼り付けて傷が付くことを防ぎましょう。)
・ストレートガイドを使用するときは、トリマの進行方向に対してガイドが右側に来るようにします。(加工物は左側に来ることを徹底!)
・溝掘り加工では基本的にストレートビットを使用します。
基本的に加工材は左、ビットは右に設置することを覚えておきましょう。
使用上の注意点とは?
ここではトリマを使用する上で知っておきたい注意点をまとめました。実はトリマ使用中の事故はとても多いので十分注意しましょう。
材料にトリマを密着させた状態で電源を入れない!
トリマのビット部を十分に回転させないで作業をした場合、刃に反発力が生まれ制御不能に陥り、思わぬ怪我や事故を引きおきします。
この反発動作をキックバックと呼び、電動工具の使用中に起きる事故で最も多い事例の一つですので、材料から離して十分に回転させてから切削をはじめましょう。
たくさん飛散する粉塵の対策を行う!
トリマは材料を削る電動工具なので、とにかく大量の削りカスが排出されます。
粉塵の備えとして、防護マスクと防護ゴーグルは必ず用意したいアイテムです。
こんなの余裕だろうと、何も装備しない状態で作業をした方は一瞬で喉がイガイガ、目には粉塵が入り鼻をかんだら削りカスだらけになり、作業できる状態では無くなったので要注意です。
※作業グローブには革手袋を使用し、軍手は使用しないでください。軍手は材質や構造上、機械に巻き込まれやすく怪我のリスクが大きく向上します。
まとめ
今回はトリマの特徴や使用上の注意点、使用方法を詳しく解説しました。
ただ切ったり削ったりではなく、ひと手間加えた飾り面取りや溝切りをするにはトリマを活用することで、ワンランク上の木材加工が可能になることがお分かりいただけたと思います。
しかし、電動工具の使用中に起きた事故や怪我で最も多いのは、一位の丸ノコに次いでトリマが第二位という事実もあります。
どんな電動工具も使用法を誤れば大きな怪我のリスクが上がりますので、使用する際は油断せず、横着せず、正しく楽しく使うことを心がけたいものです。